『山田孝之のカンヌ映画祭』ワナビ狂騒曲 - 作品の感想(ネタバレあり)

 

  『山田孝之東京都北区赤羽』に続く、ドキュメンタリー風作品。今作では、山田孝之山下敦弘のコンビに加え、なんと芦田愛菜さんが登場。山田孝之に振り回されオロオロする山下監督に対し、山田孝之に心酔し、彼についていく芦田さんの姿が対比的で面白い。

 

 あくまでカンヌにこだわり、パルムドールをとらなければ意味がない、それ以外には何の価値もないとでも言うような山田の態度に対し、山下は困惑しつつも彼の夢の実現に力を貸します。

 いわゆる「頭の中にしか存在しない名作」にこだわり、完成された作品を作り上げるためのスキルを持ち合わせていないワナビを皮肉っている。曖昧模糊とした自身の理想にそぐわないものは無価値と断じ、いつまでも作品を完成させることのできない悲しい人間の姿が描かれています。本作の面白いところは、夢見がちなワナビの役を、俳優としての実績や実力は抜群な山田が演じているところ。つまり、全く何も成し遂げたことがない人間の滑稽さを描いているのではなく、映画に関わった経験がありながらも、求められる役割を全く果たせていないズレ感に可笑しさがあります。

 映画のプロデューサーとしての実績はまだない(という設定)山田が、俳優としての成功をプロデューサーとしても活かせるはずと勘違いしている様が悲しく映ります。特定の分野で成功したからといって他の分野でもうまくいくとは限らないのですが、人は別の分野での成功体験を引きづって大怪我をしてしまいがちです。俳優はいわば、整えられた環境のなかでいかに素晴らしいパフォーマンスを発揮できるかが勝負な仕事ですが、他の人が最大限の力を出せるように環境を整えてあげる側のプロデューサーとでは、求められる能力も全く異なります。そこの差に気づかぬまま、山田は自身のクリエイティビティで現場を混乱させてしまう人間として表現されています。

 

 一方の山下監督はまさに気配りの人間として描かれています。役者達に最大限気を配り、山田の無茶振りをなんとか形にしよう、ひとつの作品として完成させようと奔走します。その気配りが山田には妥協の産物としか映らないようで、次第に意見の対立が表面化していきます。それがピークに達するのが撮影初日。自身の謎のこだわりで撮影スケジュールを無茶苦茶にしようとする山田を山下はなんとかなだめようとしますが、現実的な予算の限界を持ちだして説得しようとする山下を山田はクビにしてしいます。山田にとっては、作品にかけられる予算もスタッフや役者のスケジュールも「どうにかなるもの」でしかなく、自身の理想に優先するものではありませんでした。

 

 山下監督の苦労をみていると、ちまたに蔓延る駄作も、駄作と自覚しつつもなんとか完成にこぎつけようとするスタッフの奮闘があるんだろうなという気持ちにさせられます。

 そして『山田孝之 3D』本当に作っちゃったんですか。「このお話はフィクションです。」的なものかと思ってたんですが、やはりもうひとひねりいれてくるところが山田孝之って感じですね。

「映画 山田孝之3D」6月に公開!山下敦弘監督メガホン、芦田愛菜が友情出演 : 映画ニュース - 映画.com