映画『オーバー・フェンス』感想

 

オーバー・フェンス

オーバー・フェンス

 

 

 オダギリジョー蒼井優主演。これといった目標もないまま、怠惰に職業訓練校に通い続ける男と、情緒不安定なキャバクラ嬢恋物語

 舞台は北海道函館市。観光都市としての評判は高いですが、まあやはり田舎なんですよね。作品内で描かれる職業訓練校も、田舎特有の空虚感というか、自分はここから抜け出せない、あるいは抜け出したとしても結局は戻ってきてしまう、というようなある種の諦念が場を支配していて、終始気怠げな空気です。

 それは動物園の檻のなかに囚われた動物として表現されていて、檻の中にいる時間があまりにも長いと、いつしか檻の中から出ることに恐怖すら感じるようになってしまいます。象徴的なのは、開け放たれた檻から逃げ出そうとしない鳥に対し、蒼井優演じるサトシが、「なんで出ないの!」と叫ぶシーンです。傍から見れば簡単に抜け出すことのできる環境であっても、そこに慣れてしまった者にとっては、安全な檻から飛び出すのは、とてつもないハードルのように思えたりもするわけです。

 結果として柵の中でつまらない小競り合いを繰り広げるしかなく、それが訓練校のなかでの乱闘騒ぎにつながったりもします。こんな環境で争っても虚しいだけということは多くの人は分かっているのですが、たまに本気で縄張りを主張し始める人がいます。それがまたただでさえ虚しいのに、虚しさに拍車をかけるという、負のフィードバックループが生じてしまって、非常に物悲しい。訓練校でオラついていた彼の配役は非常に適格で、いかにもいそうな奴だな〜というか、実際いましたって感じでナイスキャスティングでした。

 そして、極めつけ。作中のラストとなるイベントがあまりにもしょぼい!職業訓練校のソフトボール大会!マジでどうでもいい!そもそも職業訓練校でソフトボールの練習をする理由も分からない!傘で素振りするような男に「ホームラン打つから」なんて言われても、病気の子を前にしたプロ野球選手じゃないんだから、客観的にみたら全く心に響くわけはありません。

 でもそんなもんです。どうしようもない無力感に苛まれている人間にとっては、一見どうでもいいようなイベントこそが、自分の葛藤とか過去と向き合うために重要だったりするわけです。何が人生において重要なイベントなのかなんていうのは、極めて主観的なものであって、他人の尺度を当てはめてみても益なきことなのかと。

 

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