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映画『聖の青春』ひしひしと伝わる棋士の息遣い - 作品の感想


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©2016「聖の青春」製作委員会

 11月19日より公開になりました、映画「聖の青春」を鑑賞してきましたので、感想などについて述べていきたいと思います。少々ネタバレを含みますので、ご注意ください。

感想

 対局中は過剰な演出を抑えて、対局者の息遣いや無意識の仕草、独特の間が伝わる素晴らしいものになっていたと思います。対局中に頭をかく仕草や扇子を鳴らす癖などは、普段から対局中継を視聴している方にはお馴染みかと思います。

 俳優陣の演技も抑えるところは抑えつつ、闘志をむき出しにして盤に向うさまは棋士の生きざまが痛いほど伝わってきました。松山ケンイチは今作のためにかなり増量をして撮影に臨んだようですが、その甲斐あってか、鬼気迫る素晴らしい演技をされていました。私は実際に故村山九段を拝見したことはほぼありませんが、きっとこんな感じの方だったんだろうなと、根拠もなく思わせるほどの説得力がありました。

 また、原作に漂うどこか優し気な雰囲気も映像内で絶妙に表現されていているように感じました。対局後の羽生を村山が後をつけるところや、新居が一瞬で荷物に埋め尽くされる様、師匠とのあたたかな信頼を感じさせる掛け合いなど、クスリとした笑いを誘いながら、独特で不器用ながらも真摯に人と向き合う人となりが伝わってきました。

 総じて、対局の緊迫感や棋士の生きざま、村山聖とその周囲の人間模様が素晴らしい配分で織り交ぜられた作品だと思いました。

 

事実との相違

 映画の演出上、いくつか事実と異なる表現がされているところがありました。現実に故村山九段が王将のタイトルに挑戦したとき、王将保持者は谷川浩司九段であり、羽生善治三冠(現在)ではありませんでした。映画の演出上、将棋ファン以外にも知名度の高い、羽生善治三冠を対局相手としたほうが盛り上がるだろうという判断だったのかもしれません。全体を通して、村山聖羽生善治という二人の構図が作品の根底にあったように感じました。

 また、最後の羽生善治との対局に関しては、1998年度のNHK杯決勝の対局内容に準じたものであると思われます。実際には持ち時間の短い短時間の対局でしたが、棋譜については同一のものかと思います。

 ちなみに、羽生善治が7冠を達成するシーンに谷川九段が登場しているのですが、その役を務める俳優の方が現役のプロ棋士である佐藤康光九段に似ていらっしゃるので、将棋ファンの方は少し混乱したかもしれません(笑)。

 

実在棋士の出演

 また、プロ棋士である、山崎隆之八段、田丸昇九段、中村真梨花女流三段、山口恵梨子女流二段が出演されていました。鑑賞前に棋士の方が出演されているという話は耳にしていたので、注意しながら観ていたのですが、山崎八段と田丸九段は残念ながら見つけることができませんでした。

 

おわりに

 作品全体を通して、将棋ファンもそうでない方も十分楽しめる奥深い作品になっているように思います。導入部分は少し冗長に感じる部分もあるかもしれませんが、徐々に作品が持つ独特の雰囲気の虜になることでしょう。

聖の青春 -上映劇場- : 角川映画