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『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』システムは哲人になり得るか - 作品の感想

 

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス Blu-ray Premium Edition

   映画 『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』の感想になります。ネタバレを含みますので、これからご覧になる予定の方はご注意ください。

 

感想

    本作はシビュラシステムを内戦中の途上国に輸出した場合、現地ではどのように受け入れられるのかというストーリーになっています。

    作品の総評としては、劇場版ということで少々アクションに寄り過ぎなようにも感じられましたが、シビュラシステムの存在価値というテーマがまた一つ深められた点は非常によかったと思います。

    エンドロール後のCパートで語られるように、朱の要求により行われた選挙で、シビュラシステム推進派の議長再選が有力であることが判明します。

    明日の命すら保証されないような環境では、人間の自由意志だとか得体の知れない物に支配される不気味さといったものは後回しにされてしまうということなのでしょう。それよりも優先されるのが身の安全であり、国民はそれを選択したというのが本作の結論でした。

 

シビュラシステムの価値と位置づけ

    テレビアニメの一期や二期では舞台が治安の良い日本であったため、シビュラシステム導入を正当化する最も基本的な根拠である、平時の治安維持という点はあまりフォーカスされていませんでした。むしろ、物語の焦点はシステムが捉えきれないイレギュラーな事象をどう扱うかという点にあり、それを通して人間の尊厳や社会のあり方というものについて考えるというのがテーマであったと思います。

    それに対し劇場版では、システムの基本的な治安維持機能がいかに有用で貴重なものであるかという点が強調されていました。このシリーズの設定では、日本以外の外国では治安維持が大きな課題となっているという設定ですので、今後ますますシビュラシステムが他国に広がってゆく可能性が考えられます。

    また、一期のラストでのシビュラと朱の会話にもあるように、人間の強さに希望を抱いている彼女であっても、シビュラの価値は否定できないのが本音です。シビュラを構成する個々のメンバーに対する反感はあるでしょうが、全体としてシビュラには自浄作用も備わっていますし、「大抵の場合」正しい判断をしてくれるのは紛れもない事実です。したがって、このシリーズではシステムによる支配イコール悪という構図にはなっておらず、シビュラの価値は認めつつも、よりよい道を模索するというものになっています。

 

登場キャラクターについて

常守朱


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©サイコパス製作委員会

アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」公式サイトより

    本シリーズの主人公。メンタルも頑強で、知性、身体能力ともに高いというストレートに優秀なキャラクターは嫌味になってしまいがちですが、彼女の場合はそれがないのが面白いところです。よりウザいキャラクターがいるからでしょうか。格闘もかなり上達しているようで、本作では、かつて自身が「本当に人間ですか?」とまで評した狡噛と渡り合うシーンもみられました。責任と権限が大きくなるにつれて性格がキツくなってきている印象。

狡噛慎也


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©サイコパス製作委員会

アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」公式サイトより

    安定のカッコよさでした。数々の派手なアクションシーンに加え、博識な読書家っぷりも健在。おなじみの引用バトルも見逃せないところ。今後のシリーズにどう絡んでくるかに期待。

悪役の方たち


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©サイコパス製作委員会

アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」公式サイトより

    やはり槙島という強烈なキャラクターのあとでは、少々悪役としての魅力に欠けるように思います。今後彼よりも面白いキャラクターを作れるかという点がサイコパスシリーズ最大の課題かもしれません。イケメンキャラでもしっかりイリミネーターで破裂する所はサイコパスだなという感じ。

 

 

今後の展開について

   このPSYCHO-PASSシリーズが今後も続くとすれば、どのような展開になってゆくのかが非常に気になるところです。このまま順当にいくと、シビュラが世界征服を果たすという結末が最も有り得そうなので、ドラマの展開上、シビュラを代替する新たなシステムの登場などにより、シビュラの生存圏を脅かすような事態が必要になってくるのではないでしょうか。

    システム全体としてのシビュラの自己保存欲求といったテーマはまだ議論されていないように思うので、個人的にはその辺りが気になるところです。自身よりもよいシステムが出現した場合、素直にそれを受け入れるのか、あるいは生存圏を争って自分自身の価値を貶めるのかといった構図は考えられるかもしれません。

    何はともあれ、今となっては貴重なSFアニメシリーズなので、ぜひ第三期の制作に期待したいところです。