読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画『インフェルノ』殺人ウイルスは人口爆発を防ぐ救世主たり得るか - 感想

f:id:yasukkokoko:20161031190505p:plain

created by NIAID

 『ダヴィンチ・コード』、『天使と悪魔』に続く作品、『インフェルノ』。メインキャラクターの大富豪で化学者のゾブリストが開発したウイルスについて、原作未読者の視点から考えてみたいと思います。ネタバレありですので、これから映画をご覧になる予定の方はご注意ください。

 

何故ウイルスの種類は明かされなかったのか

 最後のシーンでウイルスの種類を明言しない構成になっていた点がひっかかりました。個人的には、てっきりウイルスの内容が作品のオチになるものだとばかり思っていましたので、そのままエンドロールが流れ出したときには驚きました。

 ウイルスの性質こそ明らかにはされませんでしたが、映画のなかでは、ウイルスは致死性の高い殺人ウイルスであることを匂わすように描かれていました。作品の勢いとして、ウイルスの散布は絶対に阻止しなくてはいけないというわかりやすい流れが必要だったのではないかと思います。後に述べる理由から、ウイルスが殺傷性のあるものだとは考えにくいので、その前提で考えるならば、ウイルスの性質は、明かしてしまえば鑑賞者がゾブリストの思想に共感してしまう恐れがあるものなのではないかと予想できます。

 また、ゾブリストが過去にWHOに対し、食事に不妊薬を混ぜることを提案していたというエピソードが語られていましたので、ウイルスの中身も似たようなもの、すなわち人類の生殖能力を下げるものだと予想した方は多いのではないでしょうか。

 

なぜ殺傷性ウイルスではだめなのか

 例えば作品内のウイルスが感染者の半数を死に至らしめるものであったとしましょう。人口は40億ほどまで減少するはずですが、人口爆発による危機を防ぐうえでこの変化は一体どれほど貢献するでしょうか。長くても数十年危機を遅らせるという程度の効果しかないのではないでしょうか。数十年の間になんらかの解決策が見つかるか、模倣犯(殺傷性ウイルスの配布)が継続的に現れれば人口爆発は防げますが、これはあまりにも無責任な考え方というものです。ゾブリストのような力のある人間が心の底から人類を救いたいと考えていたのであれば、このような不確実な手段に頼るはずはありません。

 また、そもそもの前提として、人口爆発による問題は今すぐに起こるものではありませんので、現在生きている人間を殺す必然性はありません。したがって、ゾブリストの主張が正しいという前提に立つならば、段階的に人口を減らしていけば問題は解決されます。これを実現するには、生まれてくる子供の数を減らすことができれば十分であり、ゾブリストは生殖能力を持つ人間を減らすウイルスを拡散することが、その具体的な手段になると考えたのではないでしょうか(経済は死にそうですが)。

 

おわりに  

    まあ原作読めばわかる話なのですが、大まかなシナリオを知っている状況で上中下と三冊読むのも結構きついです。原作のネタバレ読む限りではこの辺りも詳しく説明されてるようなので、気になる方はやはり読んでみるほうが良いのかと。読んでない自分が言うのもなんですが。

    個人的には人口爆発による問題よりも生殖能力の低下のほうがよっぽど酷い事態を引き起こすのではないかと思います。

 

インフェルノ(上) (角川文庫)

インフェルノ(上) (角川文庫)