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『ブラック・ミラー』シーズン2第1話「ずっと側にいて」クローンはオリジナルになり代われるか? - ネタバレと感想

『ブラック・ミラー』Black Mirrorシーズン2第1話あらすじのネタバレと感想になります。今回は、人工知能技術が発達した社会で人の死とどのように向き合うかがテーマとなっています。

あらすじ 

 交通事故で恋人のアッシュを失い、悲嘆にくれる主人公の女性マーサ。友人に勧められ、亡くなった人と会話ができるサービスを利用し始める。このサービスは、亡くなった人間のネット上での発言をSNSから学習し、まるで本人のように会話ができるAIを創り上げるというものである。

 当初はこのサービスを受け入れられなかったマーサ。しかし、彼の死と自身の妊娠の発覚により精神的に不安定になっていたところ、衝動的にAIのアッシュにメッセージを送る。生前の彼のような返事をもらうことで、あたかも彼が蘇ったかのような感覚になり、彼女は心の安定を取り戻す。しかし、このようなサービスを利用していることを他人に話すことはとてもできず、家族にも内緒のままサービスの利用を続ける。

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アッシュAIとのチャット画面。まるで本人かのようなジョークを交えている。

『ブラック・ミラー』シーズン2第1話「ずっと側にいて」より 

    当初はテキストチャットのみのサービスを利用していたが、次第に彼の声が恋しくなるマーサ。生前のアッシュの動画から声の特徴を学習させ、彼と通話を始めるようになる。電話越しのアッシュはまるで本物の彼のように話し、彼女は彼を心の支えとするようになる。

 亡くなった恋人を模したAIとのやりとりにのめり込むマーサ。彼と触れ合いたいという気持ちが抑えきれなくなり、AIがインストールされた人工の肉体を購入する。本物のアッシュと瓜二つだがどこか雰囲気の異なる彼に最初は戸惑うが、目の前に彼が現れたことに感激する。

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人工ボディによって蘇ったアッシュ。外見上は本人とほぼ見分けがつかない。

『ブラック・ミラー』シーズン2第1話「ずっと側にいて」より

 しかし、学習データに不足があるため、本物のアッシュとは微妙に異なる行動をとる人工ボディのアッシュ。マーサは次第に生前の彼との違いが気になり始め、彼に苛立ちをぶつける。やはり本物の彼と作り物のAIでは違うという事実に耐えきれなくなった彼女は彼を崖に連れていき、ここから飛び降りるように命じる。しかし、泣きわめく彼を前に心が揺らぎ、決行させることはできなかった。

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見せかけながらも人間らしい表情をする「アッシュ」。

『ブラック・ミラー』シーズン2第1話「ずっと側にいて」より

 

 時は経ち、マーサには娘が生まれる。娘の誕生日、彼女は娘と一緒に屋根裏部屋へと向かう。そこには人目を忍んで生活する「アッシュ」の姿があった。

 

感想

 AIの人間性というのはSFにおいて長らく議論されてきたテーマでありますが、本作では、SNS上のデータからの学習によって特定の人間を模したロボットの人格がテーマとなっています。オリジナルの人間が存在するわけなので、たとえ故人であってもその人の権利も尊重されなければいけません。自分の複製を認めないというのも正当な主張に思えるため、単にAIに人格があるという事実だけをもって彼の存在を認めるわけにはいかないのが難しいところです。

 本作の「アッシュ」は難しい表現(「あなた(AI)はあなた(本物のアッシュ)じゃない」という文など)を理解できませんし、あまり融通のきかない設定になっています。現在でもSNS上の会話やメールのやり取りを蓄積すればそれなりのデータ量になるでしょうから、人工ボディはともかく、自然言語分野のAI技術が発展すればこの作品のアッシュに近いものはいずれ作れるようになるのだと思います。現状でも著名人を模したtwitterボットが存在しますが、近い将来人間の複製という問題は現実のものとなるのかもしれません。

 

 死とはなんであるかについても考えさせられます。通常であれば、人は死後もだれかの記憶に残り続けるわけであり、その人の立場が完全に奪われることはないでしょう。しかし、本作のようなAIが作られるとなると、AIがその人に成り代わるわけですから、AI技術が完璧であったならば、もはや死んでしまったアッシュは顧みられることはなくなってしまいます。「アッシュ」という名前はAIの彼を指す言葉へと変化し、亡くなった人間を指す名前ではなくなってしまう可能性があります。亡くなった人間の側からすると、なんだかよくわからない自分モドキが自分の立場を奪ってしまったという感じでしょうか。それとも、死後も愛する人のそばにいられるというように考えるひともいるのでしょうか。

 

 また、あまりにも人間に近いロボットの場合、受け入れられなかったからといって容易に廃棄することもできないという点も難しいところですね。作品の最後でもこの点が問題になります。

 生身の人間であれば、例えば会社をクビになっても存在価値が消えるわけではないですし、恋人に振られたからといってその人の人生が否定されるわけではないでしょう。しかし、ロボットというものは基本的になんらかの目的をもって作られるわけなので、不要になるか役割を果たせなくなれば廃棄されてしまうのは当然のことです。不要になってしまった「ほぼ人間」のAIは一体どこに行けばよいのか、考えさせられます。

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人目につかない屋根裏での生活を強いられる「アッシュ」。

『ブラック・ミラー』シーズン2第1話「ずっと側にいて」より

シリーズ全体のまとめ

www.moveplot.com

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