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『ブラック・ミラー』シーズン1第3話「人生の軌跡のすべて」記憶の価値と忘却の効能 - ネタバレと感想

 

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『ブラック・ミラー』シーズン1第三話「人生の軌跡のすべて」より

 

  SFオムニバスドラマ『ブラック・ミラー』Black Mirrorシーズン1の第3話「人生の軌跡のすべて」のネタバレと感想になります。  

あらすじ

 脳にチップを埋め込み、記憶を正確に保存することができるようになった未来が舞台となる。チップ内の記憶は自由に遡って再生・消去することが可能で、本人の許可があれば他人の記憶も視ることができる。空港などの公共機関を利用する際は、過去に問題行動を起こしていないかどうか直近の記憶を提出する必要があり、職場での昇進も記憶をチェックしたうえで査定が行われる。

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警備員に直近の記憶を検査される主人公。

『ブラック・ミラー』シーズン1第三話「人生の軌跡のすべて」より

 しかし、全ての人間が脳にチップを埋め込んでいるというわけではない。盗難被害によってチップを失う人間もいれば、チップの記憶に人生を左右されることを嫌って脳からチップを摘出し、「チップ断ち」をする人々も現れ始めている。確たる証拠や記録としてのチップの価値を信じる者がいれば、チップに頼らない曖昧な記憶に快適さを感じる者もいる。
 
 主人公のリアムはある日パーティでジョナスといういけ好かない男と出会うが、彼と妻のフィオンが過去に交際していたことに不快感を覚える。リアムは妻の過去の相手に嫉妬し昔のことを問い詰めるばかりで、現在の妻を尊重しようとしない。夫婦でベッドを共にする際も過去の盛り上がった行為の記憶を再生し、現実の相手に対する対応はなおざりになってしまう。 

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ベッドを共にしながらも、現実の相手を感じるのではなくお互いに過去の性行為の記憶を再生している。『ブラック・ミラー』シーズン1第三話「人生の軌跡のすべて」より


 フィオンとジョナスの関係が頭から離れないリアムは、二人の会話の記録を繰り返し再生しているうちに嫉妬を抑えきれなくなる。とうとう酔っ払った状態でジョナスの家を訪ね、口論の末に彼に暴行をはたらいてしまう。妻との記憶をチップから削除するよう脅迫するが、その過程で二人が不倫していたことを知る。
 自宅に戻った彼は、妻にジョナスとの不倫について問いただす。彼女は不倫の事実を認め謝罪するが、子供と自分の血がつながっているかどうか不安になったリアムは、二人が避妊していた証拠として妻に過去の性行為の記録を再生するよう要求し、二人の関係は完全に壊れてしまう。
 妻との絆を失ったリアムは、ひたすら過去の幸せな記憶を再生することで自分を慰める。その虚しさに耐えきれなくなった彼は、衝動的に自分の脳からチップを取り除く。
 

感想

 過去のあらゆる記憶を参照できるようになってしまえば、人は過去の素敵な経験に浸ったり、他人の行動の粗さがしを頻繁にするようになり、現在に対する感覚が希薄になってゆく恐れがあるという教訓が込められています。

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赤ん坊の記憶チップを再生しベビーシッターの行動を監視するフィオン。

『ブラック・ミラー』シーズン1第三話「人生の軌跡のすべて」より

 

 この作品を観ると、人間の持つ忘却という機能がどれだけ重要なものであるかを感じさせられます。過去の記憶が曖昧で不確かなものであるからこそ、現在に目を向けることができる。人間を過去の実績に基づいて評価するというのは昔から当然のように行われていることではありますが、チップ内に厳密に記録されてしまうとなると、日々の行動もかなり制限されてしまうように思います。その点を考慮すると、本作の登場人物はかなり刹那的に行動しているようにも見受けられます。
 現代でもSNSなどのネットコミュニティを通して過去の交友関係の記録が残ってしまう懸念は存在しますが、このような現実をより極端にした状況がこの作品の設定であるともいえるでしょう。人間のなんでも知りたがる性も、ときには有害にはたらきうるという説教は昔からの定番ではあります。
 本作でも夫婦関係が壊れてしまった原因は妻の不倫にあったわけですが、リアムの嫉妬深い性質が記憶チップという技術と最悪の相性であったことが最後の引き金をひいてしまいました。上手く活用できる人間にとっては大きな武器になるのでしょうが、どうしても特定のテクノロジーと相性が悪い人間というものは存在するという点が難しいところですね。

 

 個人的には冒頭の査定面接で話題に出た、子供のころの養育の記憶を利用して親に対し訴訟を起こすというテーマの方が興味深かったのですが、それに関して掘り下げられることがなかったのは残念でした。
 また、細かいギミックに関していうならば、脳にチップを埋め込むといっても脳の機能が拡張されるわけではなく、あくまで眼球に動画撮影と再生の機能を追加しただけという限定的なもののように思われます。脳に埋め込むというのは難しいですが、生活の記録と再生という機能だけならば現在販売されている端末でも似たようなことは実現可能なように思います。

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 手元の端末を操作することで過去の記憶をシークすることが可能。

『ブラック・ミラー』シーズン1第三話「人生の軌跡のすべて」より

 

シリーズ全体のまとめ

www.moveplot.com

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