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『トレーニング・デイ』自分を信じるか、他者に委ねるのか - 作品の感想

 

映画『トレーニング・デイ』のあらすじと感想になります。ややネタバレを含みます。

あらすじ

 デンゼル・ワシントンイーサン・ホーク主演。凶悪犯罪課に新しく配属された若手警官と先輩刑事をめぐる善悪の葛藤を描いた作品。

 主人公は配属後、ベテラン刑事とコンビを組んで凶悪犯罪の取り締まりに挑むことになる。しかし、先輩のベテラン刑事の捜査方法は悪人に対する賄賂や収奪、暴行など自身の倫理基準を遥かに超えるものであった。彼はそれを「より大きな悪を捕まえるために必要なこと」と表現するが、それが心からの言葉であるのか、単なる自己正当化のための方便であるのか新人である主人公には判断することができない。先輩刑事に対する疑念と自身の正義の間で葛藤する主人公はどのような決断を下すのか。

 

感想

若手とベテランの間にある情報の非対称性

 新米である主人公にとって、先輩刑事の言葉は非常に重い。身に覚えのある人も多いと思うが、新たなコミュニティに加わった場合、最初はそのなかでの適切な振る舞いというものが分からないことが多い。

 そのような状況で最初に行われるのは、モデルからの学習である。すなわち、コミュニティの中から参考になりそうな人物を選び、その人の行動を真似るということだ。もしもその人物がモデルとして相応しくないと判断した場合は、また新たなモデルを探すこともある。

 一方、この作品における設定ではモデルとなり得る人物は一人しかいない。したがって、主人公の取りうる選択肢は、彼の行動を真似て同質化するか、彼のやり方を否定し自身の正義を貫く他ない。

 しかし、コンビを組むこととなった先輩刑事の迫力や発言の説得力は相当なものである。経験の少ない若手がこれに抗い、自分の価値観を保持し続けるのは容易なことではない。配属初日に経験豊富なベテランの悪徳(かどうかわからない)行為を目の当たりにして、それをキッパリと否定できる人間がどれだけいるだろうか。「これくらいやらないとこの世界ではやっていけない」と言われてしまえば、なあなあの内に彼の一味に取り込まれてしまうのがオチである。

 先輩刑事の行為が凶悪犯罪捜査において一般的なものであるのか、単にこの刑事が悪徳刑事であるというだけなのか、凶悪犯罪捜査の実態に関する知識を持っていない人間には判断することは非常に困難である。

 この作品は、そのような情報的に劣位の立場におかれた状況での人間の意思決定の難しさを描いている。

 

他の関連作品

他の汚職警官ものだと、

『プライド・アンド・グローリー』や

『16ブロック』

16ブロック [Blu-ray]

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あたりもおすすめです。

また、『クロッシング』では役柄が変わって、『トレーニング・デイ』で若手警官を演じたイーサン・ホーク汚職警官役を務めます。テーマは異なりますが、『トレーニング・デイ』の後にこちらも観ておくとより面白いかと思います。

クロッシング(字幕版)