『マンチェスター・バイ・ザ・シー』人生の悲喜こもごも - ネタバレあり感想

 主演・ケイシー・アフレックの抑えた演技と、父を亡くしながらも飄々と生きる甥を演じたルーカス・ヘッジスの演技が印象的な作品でした。

 鑑賞前の予想に反して、作品は優しいユーモアを交えながら、穏やかな空気のもと展開していきます。主人公のジョーは時折やりきれない感情をむき出しにして揉め事を起こしますが、周囲の人間の優しさが、彼がひとり孤独に浸ることを許しません。甥のパトリックは、彼女やらバンドやらとジョーを引っ張り回しますし、古い知人はジョーに救いの手を差し伸べ続けます。パトリックの繰り出すくだらない下ネタや皮肉はクスりとさせるもので、二人のやりとりを眺めているこちらとしては、ジョーの苦しみはこうして癒やされてゆくのだ、パトリックの存在が彼を救ったのだと勘違いさせられてしまいます。

 

 しかし、元妻であるランディと不意に街で出くわしたとき、彼の過去に対する深い後悔が溢れ出します。言葉では容易にその感情を表現することのできない彼は、ただ嗚咽を漏らすことしかできません。この光景を目の当たりにして、見かけばかりの穏やかな日常が、いかに無力であるかを思い知らされます。彼が抱えている傷は少しばかりの優しさで救われるものではないのだ、彼は永遠にこの苦しみと戦わねばならないのだと、思い知らされます。あまりにも些細な不注意から生まれてしまった事故ゆえに、その事件を日常から切り離すのも、彼にとっては非常に困難でしょう。

 エンドロールが流れるまでの間には、ジョーはパトリックと暮らす決断を下すことはできませんでした。自分に子供を育てる資格がないという考えは、それほどまでに強いものだったのでしょう。しかし、彼は以前よりも少しだけ人に歩みよることを肯定できるようになりましたし、二人が再び出会ったことは、お互いの人生に僅かであっても好い影響を与えたには違いありません。

 容易な起承転結によって物語を完結させるのではなく、ジョーと周囲の人間の人生が可笑しさと苦悩にあふれながら、これからも続いていくのだということを表現する終わり方であったと思います。

 

 人の苦しみがいかに見えづらいものであるか、孤独を理解するということがいかに困難であるかを実感させられるとともに、そういった努力の尊さも同時に感じさせる印象深い作品でした。

映画『スプリット』謎のオチ - ネタバレあり感想


f:id:yasukkokoko:20170512234157j:image
© 2016 UNIVERSAL STUDIOS

 主演二人の演技は楽しめるものの、最後の展開にはいまいち納得がいかないように感じました。

 オチの意味が分からなかった方も多いかと思いますが、最後のブルース・ウィリスと女性の取ってつけたような会話は、本作が映画『アンブレイカブル』(主演、ブルース・ウィリス)と同一時空上の事件を扱っている、ということを示しているよう。

 『アンブレイカブル』未視聴の人には意味が分からないという作りになっていて、予告での「衝撃のラスト」というのが一体どの辺りにあるのか分からないという不親切なつくりになっています。私も「アンブレイカブル」は未視聴ですが、事前知識の無い人間にとってはこの作品のファンタジーとしてのライン(科学的に説明できない要素をどの程度許容するのか)が分からないまま映画が進行するため、作品に対してどの程度の緊迫感を持って臨めばよいのか少々困惑します。

 最後に明確な謎解きが行われると期待したまま結末を迎えると、思わぬ肩透かしを食らいます。

 三人の女の子のうち二人が大した意味もなく脱がされるところで、この作品がB級ホラーであることを看破しなければならないというのが本作に仕掛けられたトリックなのでした。

 

『モアナと伝説の海』美しい映像と猛々しいマオリの歌の響き - 感想

©Disney

 何よりも映像が美しい。特に海の描写は、世界で最も美しい海であろうともこの映像を超えることはできないのではないか、というほど。

 キャラクターの動きのコミカルさは、これぞアニメーションにしかなし得ない物だ!と興奮させるものだった。単純に動きの滑らかさを追求するだけではなく、アニメーション特有の「止め」や物理法則の一部をあべこべにしたような動きが非常に愉快。この辺の表現力は日本のアニメのお家芸だと思っていたのだが、3DCGアニメーションが単なる写実の世界と仮想に過ぎないバーチャルを優に超えて、新たな世界を構築しつつあると確信させるものだった。

 主人公モアナの人物描写も魅力的であったと思う。集落という硬直的な既成の枠からの脱却、反抗を経て、新たな自分を見つけ出すというプロット。単純ながらも力強く、ひとりの子どもが困難を乗り越えることで立派な人間としてたくましく成長していく姿は、非常に明快で爽快なものだった。

 また、マオリの歌の発音が個人的に非常に好みだった。モアナが洞窟で垣間見た、祖先の人々が果敢に船を漕ぎ、新天地へと向かう映像から感じる猛々しさったらない。

 

 この作品に対しては、公開時にはマオリの末裔の方からステレオタイプを助長しかねないという批判も一部あったようだが、作品を観終えて、マオリに対する憧憬を抱きこそすれども、ネガティブな印象を抱く人は非常に少ないのではないかと思う。そういった上から目線の論評こそが不愉快だ、と言われてしまえばそれまでなのだが、あらゆる価値観は外部からの目に晒されざるを得ないというのもまた事実であると思う。

 

 エンドロール後にはファンサービス的な映像が少しだけ流れる。ストーリーに直接関わるものではないが、この作品を完璧に楽しみたいという方は、ぜひ席を立たずに余韻に耽っていると、ご褒美が貰えることだろう。

府中駅付近で勉強・作業に使えるお店・施設に関する個人的メモ

府中中央図書館

 22:00まで開館。学習専用のスペースはあるが、府中市民以外は利用不可。その他の読書スペースは誰でも利用可能。混雑度は高めだが、座れないというほどではない。蔵書数も多く、自動貸出機の使い勝手が良い。近隣市民は相互利用可能。しかし臭いがキツイのが難点。どうにかしてくれ。

 
生涯学習センター

 22:00まで開館。学習スペースあり、ソファーなどの休憩スペースあり。規模の割に利用者数が少なく、特に夕方以降は閑散としている。小音量のクラシックが心地よい上、Wi-Fi利用可能。寂れ具合がむしろナイス。人に囲まれず、静かに勉強や作業を行いたい場合にちょうどよい。ただし立地が悪い。あと埃っぽい気がする。

 

マクドナルド 

 24時間営業。マクドナルドの店舗にしては空いているほうか。コンセント席も複数あり。バッテリーが必要なとき、22時以降、深夜に作業を行いたいときに利用。若干の糖分を必要とする際にも。当然ながらやかましいが、運次第。音楽のボリュームを下げろ。

 

スターバックス

 カフェインが必要なときに。高くはないが金がかかる。コーヒーの味は大したことないので、ミルクでごまかす。長時間の利用に引け目を感じる場合は100円で再度コーヒーチャージ。やはりマズイ。22:30閉店。あと1時間30分粘ってほしい。割増料金払ってもいいぞ。

 

TOHOシネマズ

 なんかもう面倒くさくなったときに行く。勉強なんてしてられっか、という気分のときに。劇場としてのクオリティのわりに混んでいる。

 

 

 競馬場や刑務所、米軍基地跡やら、ネガティブな印象を与える施設も多いが、その反動からか、文化施設の数や設備は充実している印象を受ける。そこんところのアンバランスさを受け入れられる人にとっては過ごしやすい土地かもしれない。

映画『レゴバットマン』ヒーロー物嫌いに勧めたい作品

 のっけからハリウッド映画の壮大な演出を茶化しにいくという導入に始まる。ここで笑えるかどうかが本作を楽しめる人かどうかの試金石になっている。終始オマージュやメタネタが満載で、シュールな笑いが本作の大きな魅力となっている。

 バットマンシリーズについて多少の知識がないと笑いどころの多くを逃してしまうので、本作を十分に楽しむことはできないと思われる。しかしながら、重要なのはバットマンシリーズを「観たことがある」かどうかであって、必ずしもシリーズのファンであることは要求されない。むしろ『ダークナイト』を観て「いい年したおっさんがコスプレして何やってんのよ…」とか「ヒーロの苦悩とか何マジになってんの?」という感想を抱いた方は、本作でたびたび用いられる過去シリーズに対するメタネタは大いに笑えると思う。レゴアニメという性質もあって、ヒーロー物の妙なシリアス感が受け付けないという方も抵抗感なく観ることができる作品になっている。

 

 

『夜は短し歩けよ乙女』奇抜な演出は面白いが、やや退屈な作品 - 感想

概要

 『四畳半神話大系』でも監督を務めた湯浅政明による本作。森見登美彦の人気作であることに加え、先輩役に星野源を起用するなど、公開前の注目度も大きかった作品です。

キャラクターの奇妙なアニメーションや端々のセリフには面白みが見られたものの、全体としてはやや退屈に感じる作品でした。

 

詭弁踊りの繰り返しはサムい

 まず言及したいのが詭弁踊りについて。一回目は少しクスッとさせるものでしたが、あれを二回三回と続けられるのは非常にお寒い。あれは繰り返していいタイプのネタではないと思います。

 

 途中で挿入されるミュージカル要素も必然性が感じられなかったことに加え、導入部分があまりうまくできていなかったので、唐突に始まってしまった印象で、観客が上手く入り込めない空気感ができてしまっていたと思います。

 

声優としての星野源の評価

 また、星野源の声優としての起用には賛否両論あるようですが、個人的には悪くなかったように思います。セリフ量の多い作品ですので多少舌が回りきっていない部分といいますか、声優としての技量の不足は否めませんでしたが、それがかえって先輩の不器用さを演出するのに一役買っていたように思います。

もちろん『四畳半神話大系』での「私」の見事なセリフ回しも素晴らしいものがありましたが、これはこれでよいものであったと思います。

 

まとめ

 総じて、原作ファンや『四畳半神話大系』未視聴の方には一体何が起きているのかいまいち分からない、内輪ノリの強い作品であったように感じられました。詳しく読み解いていけば面白い部分もあるのでしょうが、そもそも観客が没入しにくい空気ができてしまっていて、個人的には真剣に観るのも辛い作品でした。四畳半神話大系は非常に好きな作品ですので、本作の出来は残念に思いました。

『T2 トレイン・スポッティング』郷愁と青春の終わり − 作品の感想

 前作で仲間を騙し、大金を手に町を出たマークですが、どうにも新しい生活に張り合いを見いだせていない様子。結婚相手を見つけ、まともな職に就けている時点で、町に残された仲間たちとは雲泥の差がありますが、それでも尚、頭の中身は昔とさほど変わっていない様子。かつての親友とともに新たな悪事を企むレントンボーイですが、過去の確執は友人間に疑心暗鬼を生み出します。

 一方、自分を裏切ったマークを恨みながらも恨みきれないシックボーイは、口では復讐してやると叫びながらも、過去の退廃的ながらも輝いていた生活が忘れられない模様。何も積み重ねないまま40代になってしまった彼らは、現状の生活を肯定することができません。ここにきてマークが帰ってきたという事実は、過去の思い出に浸り、現実逃避するにはもってこいの出来事だったと言えるでしょう。

 昔のノリで騒ぎ立てる彼らでしたが、そこにベグビーという存在が容赦のない現実を叩きつけます。彼だけはマークに対する強い恨みを保ち続けており、彼の過去の裏切りを精算しようと目論みます。今や脱獄囚となってしまったベグビーには、もはや未来などありません。残された仕事は過去に対する決着をつけることのみです。

 自分を騙したマークと、マークを裁こうとしないシックボーイ、マークに情けをかけられたスパッド。ベグビーは自分だけが蚊帳の外に置かれているような心持ちだったかもしれません。三人を殺害しようとしますが、あと一歩の所で返り討ちにあい、再び刑務所へと送り返されます。

 危機的状況を乗り越え、三人の間にはなにかを達成したような雰囲気が漂います。しかし、実のところ彼らの生活は全く好転していません。昔のレコードに合わせて踊ってみても、失われた20年という時間だけがエンドロール後も重くのしかかってくることでしょう。